白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2009.10.8 
           

新型インフルエンザ(院内レクチャーより)


その1:従来のインフルとの差異
その2:ワクチン・致死率の情報は正しいのか?
その3:新型インフルエンザの検査・予防法
その4:参考:インフルエンザの治療費(予防投与など)


今後の予測

今回の新型ウイルスは、メキシコからアメリカで確認された時点で、厚生省の対応とは無関係に国内に上陸するであろうという予測があった。新型ウイルスについては数年以上前から鳥からの変異(H5N1、強毒性)が予測されており、今回のインフルは豚から発生した別のウイルス(弱毒性)であるが、今後も増加するのは確実。おそらくは、今後も小児を中心とした脳症、合併症のある高齢者、あるいは基礎疾患のない場合での死亡という報道も増加するのではないかと思われる。ただし、感染者という絶対数が増えれば0.4%あるいはそれより低い数字であっても、ゼロではない以上、死亡者が出ることを避けることはできない(これまでの季節性インフルと同様。高齢者や基礎疾患のある場合もそうだが、特に小児を中心とした対策が望まれる)。また、自然あるいは薬剤によって軽快する例もその何十倍もあることを忘れてはならない。

新型ウイルス発生 → 急増 → 蔓延 → 終息(季節性インフルと同じ扱いに)

今回の新型インフルエンザに関しては、約3~4年間の大流行?


抗インフルエンザ薬にかかる費用
インフルエンザ治療薬
タミフル®とリレンザ®はウイルスの増殖を抑えることで発熱期間などを短縮します。

(※)予防投与の場合(保険外診療のため、医療機関によって負担額は異なります)以下は勤務している病院の例です。

 タミフル®……6,570円    (予防投与については1日1回75mg、10日間内服)
 リレンザ®……6,810円


予防投与については、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者さんの同居家族または共同生活者であり、最終的に医師が必要と判断した方が対象となります。その他の条件は次の通りです。

・65歳以上
・代謝性疾患(糖尿病など)がある
・腎機能障害がある ・慢性心疾患がある
・慢性呼吸器疾患がある(※)
(※)気管支喘息を含む慢性呼吸器疾患については、リレンザ®は吸入薬であるため、気管支へ影響を与える可能性のあることから予防投与の対象とはなっていない。

季節性インフルに対しては、数年前まで全世界のインフルエンザ検査の90%以上、治療薬の75%以上が日本で消費されていた。海外では、インフルエンザは「寝て治す病気」と考えられている。なお、検査薬はラボ(実験室)だけで使用されており、臨床での診断は症状と理学所見のみで行われていた。現在も日本ではインフルエンザに対して薬を使いすぎとも言われているが、学会からは新型インフルと考えられる症例については、全症例で薬剤による治療を促す勧告(強制ではない)も出されている。現場ではどのように対応するべきか・・・?


(2009.11.24追記:治療費の目安)
インフルエンザのために受診された場合(初診)、診断および治療にかかる費用は3割負担額で3,000~4,000円が目安になります(注意:合併症が疑われた場合の血液検査・レントゲン写真などの追加検査、薬剤によっては更に費用がかかります)。レントゲン等を含まない、いわゆる軽症と考えられるインフルエンザの検査と治療にかかる医療費の内訳は以下のようなものです。

例:インフルエンザ抗原簡易検査が陽性、リレンザ®を5日間および解熱鎮痛剤としてカロナール(200)®1回2錠を頓服で5回分処方した場合。1点10円で計算します。

初診料・・・273点(電子カルテの場合には270点)
薬剤情報提供料・・・10点
カロナール(200)® 2錠 5回分・・・10点
リレンザ® 20ブリスター・・・337点
インフルエンザ抗原検査・・・150点
 +検体検査管理加算(Ⅰ)・・・40点 →医療機関の規模によって100ないし300点のことも
 +免疫学的検査判断料・・・144点

合計1,029点→3割負担額の窓口負担額は3,090円


[インフルエンザ関連]
新型ワクチン接種後のインフルエンザ感染症例(2009)
インフルエンザワクチンの作り方(2009)
豚インフルエンザの発生

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