白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2009.10.8 
           

新型インフルエンザ(院内レクチャーより)


その1:従来のインフルとの差異
その2:ワクチン・致死率の情報は正しいのか?
その3:新型インフルエンザの検査・予防法
その4:参考:インフルエンザの治療費(予防投与など)


新型インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチン
インフルエンザの予防・重症化を防ぐためのワクチン。新型インフルへの効果は?

・ワクチン(薬品)を製造するのに鶏卵を使用するため、国内生産数が限られている(新型インフルワクチンを製造すれば、そのぶん季節性インフルのワクチンが減少する)。このため、海外からの輸入が検討されている。

・海外のワクチンはアジュバントが付加されている。アジュバントとは、免疫を活性化(賦活化:ふかつか)させる物質。少量の原液(ワクチン・抗原)であっても、体内で十分な効果を発揮することが可能になるという。安全性には問題がないというメーカーの見解があるが、疑問視する声も)。

・新型インフルは今年初めて確認された。ということは、仮に今年新型ウイルスに対するワクチンを接種しても、この効果を統計的に確認するには数年かかる(誰も新型ワクチンを接種したことがない = 効果は未知数) 今年の新型ワクチンは抗ウイルス効果(抗体の上昇)を検討するだけではなく、副作用を確認することも大きな目的

・1976年、ニュージャージー州で豚インフルエンザの流行が確認され、近隣の米軍訓練基地の兵士からも同じウイルスが検出。当時はスペイン風邪の再来、いわゆる新型ウイルスではないかと騒がれ、即座にワクチンが開発、わずか8ヶ月で4,000万人以上が接種。ところが、ワクチンを接種した人では、難病の神経疾患であるギラン・バレー症候群の発症率が当時の8倍にも達したという。また、新型ウイルスと騒がれたにも関わらず、現実にはこのウイルスが大流行することはなかった。ワクチンが奏功したことで封じ込めに成功したのか・・・?

→新型インフルエンザに対するワクチン接種の優先順位は、本当に「優先」なのか? 特に、海外で製造されたワクチンの安全性は、確立したと言えるのだろうか? 接種が「個人の判断」に委ねられる理由の1つ。


インフルエンザの致死率について

・インフルエンザは定点観測で実数が調査されるので、正確な死亡者数は不明。このため、超過死亡数によって推計する必要がある。 超過死亡の概念→インフルが流行した年とそうでない年を比較、増えたぶんだけインフルによる死亡と算出(インフルによる肺炎や脳炎などの合併症による死亡とは別問題)。

・新型インフルの致死率は0.4%という推計があるが、あくまでも海外でのデータ。また、最も重要な問題として、新型インフルと診断されていない感染者の実数が把握できないことがある。

→致死率 = 死亡者数 ÷ 感染者数

感染が確認されれば治癒・死亡といった経過を追うことができる。しかし、軽症例では医療機関を受診しなかった場合、あるいは医療機関でも新型インフルとして詳しい検査をしなかった場合には、「風邪」として自然軽快した例も相当数あるのではないかと考えられる。すなわち、真の「感染者数」が少なく見積もられたために、致死率が高いのではないかという考え方もある(検査の項参照)。



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