白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2009.7.3 
           

新型インフルエンザ(院内レクチャーより)


その1:従来のインフルとの差異
その2:ワクチン・致死率の情報は正しいのか?
その3:新型インフルエンザの検査・予防法
その4:参考:インフルエンザの治療費(予防投与など)


新型インフルエンザの検査
インフルエンザ簡易検査
従来の簡易検査キットの1つです。この写真の場合、A型インフルエンザウイルスが陽性と判定されます。

現時点では、新型インフルエンザの即日診断(従来のキットによる簡易検査)は不可能。従来のキットを用い、A型であれば新型・季節性のいずれかのインフルエンザの可能性が高いということになる。従来のA型インフルはメーカーによっても多少の差があるものの、感度(※)90%以上であった。しかし、新型インフルについては、感度が40~70%と低下しているとも言われており、確定診断に影響を及ぼす可能性もある。

感度:インフルエンザウイルスが確実に存在する場合、正しく「陽性」と示す確率。感度90%のとき、ウイルスが存在するにも関わらず、10%の確率で検査結果は「陰性」となる。このため、検査が陰性であっても症状からインフルが疑わしい場合には、(経過を追った上で)再検査を行うこともあり得る。

通常、夏季には季節性インフルはごくわずかであるので、簡易検査によってA型と判明した時点で新型を疑うことも可能だが、秋から冬にかけてのウイルスの区別はPCRによってしか判別できない。→PCR検査は高額、かつ結果が判明するまでに日数を要するので、新型と判明した時点で、すでに自然軽快していることも。このため、秋からは簡易検査の結果を参考として、新型・季節性の区別無く診療を行うのが現実的な対応となる。


予防法について
うがい・手洗い
うがいや手洗いは必要最小限の対策です。できるだけ頻繁に行ってください。

マスク・手洗い・うがいなど、全般的に、どれほどの効果があるのかは実際のところ不明。特にマスクについては新型インフルが流行という報道で、全国で不足する事態に。ところが、マスクの効果はせいぜい満員電車、密閉空間での感染に多少の効果があるのみ。本来はインフルと診断された人がつけることが望ましい。

医療従事者がマスクをして新型インフル患者さんと接触した場合、表面に付着したウイルスを次の患者さんに撒き散らしてしまう恐れもある(使用するのであれば、1人ごとの使い捨てが必要だが、コスト・資源面から見ると不可能)。

感染ルートとして飛沫感染の様相を持つため、手洗いやうがいは効果云々よりも最小限の対策として頻回に実施するべき。なお、手洗いについては、英語圏では「ハッピーバースデイ」の歌を2回歌うと良いとされている(十分な時間をかけられる)。

「うがい」は海外では行われていなかった地域も多く、上を向いて「ガラガラ・・・」とするのは日本だけと言われていた。海外では「口をすすぐ程度」とも。 (ただし、実際には「行っていた」というイギリスの人も。)

加湿について 季節性インフルは乾燥・寒冷な冬季に流行するウイルスで、室内を50~60%程度に加湿することで失活させることができるというデータがある。新型は夏季に流行しているため、加湿の効果が得られない可能性もある。 昨シーズン、某医療機関でインフルの集団感染が発生。そこでは加湿として、「病室内に濡れたタオルをつるしていた」ということが判明し問題となった。家庭内での必要最小限の対策であればともかく、医療機関でのこうした対応は避けなければならない。



次のページでは、今後の予測と治療費(参考データ)についてご説明します。


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