白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2009.10.26 
           

新型インフルエンザワクチン


その1:インフルエンザワクチンの作り方
その2:アジュバント付加ワクチンの長所・短所
その3:新型インフルエンザワクチン、効果の持続期間


新型インフルエンザワクチン接種開始

10月19日より医療従事者を対象にした新型インフルエンザワクチンの予防接種が開始されました(現在勤務している防府市内の病院では2日の遅れがありました)。一般の患者さんを対象にしたワクチン接種は11月以降を予定されており、今回は「新型インフルエンザの診療に携わる医療従事者(主に医師・看護師。勤務先の病院では事務職やリハビリ部門は対象外となりました)」を対象としたものです。

予防接種の効果や副作用の懸念はいまだにあるものの、国内外から少しずつ安全性・有効性を証明するデータが蓄積されつつあります。まず、このワクチンがどのように作られるのかをざっとまとめたいと思います。

11/18追記:新型インフルエンザワクチンの「予防」接種は、従来の季節性インフルエンザワクチンと同様に、新型インフルエンザ発症そのものを予防することはできません。肺炎やインフルエンザ脳症など、重篤な合併症による死亡を予防することが目的です。実際にワクチン接種から3週間後にインフルエンザに感染した患者さんがいらっしゃいましたので、こちらを参考にしてください。


インフルエンザワクチンの作り方
鶏卵
現在主流のワクチンの製造には鶏卵が使用されていますので、卵などにアレルギーがある人は注意が必要です

いわゆる新型インフルエンザに対する国産ワクチンについては、次のような過程で作成されています(添付文書を参考にしました)。

  1. 2009年に発生した「新型ウイルス」を鶏卵に注射します。手元にある添付文書によると、このウイルスはカリフォルニアで発生したものが基にされています。  A/カリフォルニア/7/2009/(H1N1株)
  2. 適度な環境に保つことで鶏卵中のウイルスが増殖します。「培養(ばいよう)」という過程です。
  3. 鶏卵からウイルスの入った液体(尿膜腔液と言います)を抽出します。
  4. この蛋白などを含む原液を処理して、ウイルスの抗原だけの液体と(HA画分浮遊液)とします。
  5. 更にホルマリンによって処理することで、ウイルスの感染性を無くします。
  6. リン酸塩緩衝塩化ナトリウム液によって、一定の濃度にしてワクチン(薬剤)が完成します。

鶏卵を使いますので、卵にアレルギーのある人が接種する場合には慎重な対応が求められます。明確なアレルギー歴がない場合であっても、ワクチンの添加物(水銀・防腐剤など)による予期しない副作用が出現することもありますので、接種してから30分間は重篤なアレルギー反応(呼吸困難や気分不良など)が出現しないか、医療機関の中で経過観察が望ましいと考えられています。

ワクチンの添加物についてですが、アンダーラインを引いたようにワクチンの成分にはウイルス(抗原)だけでなく、様々な添加物が製造過程で付加されることになります(メーカーによって、若干の違いがあります)。ただし、これらは新型インフルエンザワクチンに限ったことではなく、従来の季節性インフルエンザのワクチンもほぼ同様です。なお、参考までに添加物には次のようなものがあります。

  • ホルマリン
  • チメロサール:水銀化合物
  • 塩化ナトリウム
  • リン酸ナトリウム水和物
  • リン酸二水素カリウム

添加物による副作用としては、例えばチメロサールによる過敏症などがこれまでにも報告されています。こうした副作用も懸念されますので、ワクチンを接種する際には問診表などで確認します。

次のページは、アジュバント付加ワクチンについてです。


 

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