白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2010.5.24 

抗菌薬・抗生物質の系統


その1:抗生物質の飲み方(服用についての注意)

その2:抗生物質の味(小児への配慮)

その3:抗生剤・抗生物質・抗菌薬の違い

補足 :抗生物質の皮内テスト


抗生剤という表現はNo Good!
ドライシロップ
1回の投与で効果が1週間も持続する抗生物質も登場しました。抗菌薬も進化しています

学生時代、感染症を専門とされていらっしゃる教授から、

「抗生剤という言葉は正式な用語ではないので、使わないように。使うならば、抗生物質もしくは抗菌薬というのが正しい医学用語です。」

と、教わりました。それ以来、抗生剤という言葉は用いないように気をつけています。もう少し詳しい話をすると、抗生物質と抗菌薬、この2つの言葉にも違いがあります。

まず、抗菌薬ですが、これは病原体に殺菌的あるいは静菌的に作用する薬品の総称です。抗菌薬はさらに、化学的に合成される合成抗菌薬と、もともと微生物によって生産される抗生物質に大別されます(現在はほとんどの抗生物質が化学的に製造されています)。

抗生物質の代表とも言えるのが、1929年にアオカビ(Penicillium notatum)から偶然発見されたとされるペニシリンです。ブドウ球菌を培養中、誤って培地にカビが混入してしまい、カビが混入した部位にだけブドウ球菌が発育していなかったことから、何らかの物質によってブドウ球菌が溶けているのではないかと考えられました。このことをきっかけにペニシリンは発見されたと言われています。つまり、本来の抗生物質とは、微生物が他の微生物から身を守るために産生する物質のことです。

抗生物質も含めていわゆる抗菌薬は、その構造上の特性あるいは抗菌作用による特性から、現在までに様々な系統に分類されています。


抗菌薬の分類

ペニシリンにアレルギーがある方がいらっしゃると思います。そうした場合、セフェム系にもアレルギーのあることがあります。これらは共通する構造であるベータラクタム環を有しているためです。ペニシリン系やセフェム系のようにベータラクタム環を有する抗生物質をまとめてベータラクタム系薬と表現されることもあります。 一般向けではないかもしれませんが、抗菌薬の系統を表にしてみます。

抗菌薬 抗生物質 ベータラクタム系薬
(βラクタム)
ペニシリン系 狭域性  
広域性  緑膿菌に作用を有するもの
緑膿菌に作用を有しないもの
ペニシリン系抗生物質・ベータラクタマーゼ阻害薬の配合剤
(配合剤のため、系統としては分類しないことも)
セフェム系 第一世代 
第二世代 
第三世代 抗緑膿菌作用を有し、かつグラム陽性球菌に対しても抗菌作用の強いものを第四世代と表現することも
ペネム系
カルバペネム系
モノバクタム系
アミノグリコシド系 抗結核菌作用、抗緑膿菌作用、抗MRSA作用に
よっても更に細かく分類
マクロライド系 14員環
15員環
16員環
ケトライド系
テトラサイクリン系
リンコマイシン系
ホスホマイシン系
グリコペプチド系
ポリペプチド系
クロラムフェニコール系
合成抗菌薬 キノロン系(ピリドン・カルボン酸薬)
ニューキノロン系
オキサゾリジノン系
サルファ剤
ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤)
ストレプトグラミン系




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