抗生物質の飲み方・注意点
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抗生物質の服用方法を誤ると、本来の効果を発揮できません
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内服する抗菌薬(抗生物質・合成抗菌薬)は食後に服用すべきものと、空腹時に服用すべきものがあります。あまり意識されずに処方されることもあるようですが、同じ量を飲んだ場合でも効果に差が生じることもあります。
今回はこうした抗生物質の投与法についてまとめたいと思います。抗生物質の投与は原則として、十分な量を、適切な投与法で、最小期間にとどめること、です。
外来で処方される頻度の高い抗生物質をいくつか選択して、食前・食後のいずれに服用すべきなのかを示します。なお、第1世代セフェム(系抗生物質)は数種類特徴に応じて使いわけるべきであり、第3世代セフェム系はいずれも大きな違いはないと考えていますが、あえて3世代セフェムを数種類記載します。
ペニシリン・セフェム系抗生物質は、薬剤と細菌の接触する時間に依存して効果を発揮するため分服投与(時間依存性)、ニューキノロンは濃度に依存して効果を発揮するため1回投与(濃度依存性)が原則です。
抗菌薬の例
(商品名) |
系統 |
投与法(食事の影響) |
補足 |
サワシリン |
ペニシリン系 |
食事の影響を受けない、
3~4回に分服 |
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オーグメンチン |
ケフラール |
第1世代セフェム |
食後、3回に分服 |
徐放製剤は2回に分服 |
セフゾン |
第3世代セフェム |
食前(空腹時)に服用(※) |
黄色ブドウ球菌に強い作用
(小児の伝染性膿痂疹:とびひ) |
フロモックス |
第3世代セフェム |
食後、3回に分服 |
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メイアクト |
第3世代セフェム |
食後、3回に分服 |
経口セフェムで初めて百日咳にも有効性、肺炎球菌にも有効 |
クラリス |
マクロライド(14員環) |
食前(空腹時)に服用(※) |
特殊な投与法あり
(マクロライド少量長期療法) |
ジスロマック
(錠剤、シロップ) |
マクロライド(15員環) |
錠剤:食事の影響なし
シロップ:空腹時に服用 |
錠剤は3日間、シロップは1回
だけの服用で7日間効果持続 |
ミノマイシン |
テトラサイクリン |
空腹時に服用(※)
1日1ないし2回 |
にきびにも少量長期投与で
有効性あり |
ジェニナック |
ニューキノロン |
食事の影響なし
1日1回 |
ニューキノロン系抗菌薬は
分服しないほうが有効 |
クラビット |
(※)食前投与が原則であっても、あえて食後に処方されるケースもあります。
風邪をひいた患者さんすべてに抗生物質を処方される医療機関での約束処方(※)・医師を見たことがありますが、ウイルス性の感染症には有効性がないだけでなく、乱用によって耐性菌を作り出してしまうこともあります。
約束処方:頻繁に用いる薬剤を、予め組み合わせた医療機関独自の処方。
例:ある医療機関の「かぜAセット」の中身(特定の商品名を避けて一般名で記載します)
①~⑤を年齢によって必要量を換算、粉薬にして混ぜ合わせて処方(毎食後に分服)。
① セフカペンピボキシル(抗生物質)
② カルボシステイン(去たん剤)
③ アンブロキソール(去たん剤)
④ アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)
⑤ リン酸コデイン(咳止め)
症状に下痢などが加わると、「Bセット」として上記内容に下痢止め・整腸剤を加えた処方箋も。
約束処方そのものが悪いとは思いませんが、大半がウイルス感染症であるはずの「風邪」に抗生物質をルーチンに用いるのはいかがなものかなと……。電子カルテ(ワープロ)で印字された処方箋、本当に必要なケースもありますが、風邪をひくたびに抗生物質を処方されてはいませんか?
次のページでは、抗生物質の味(小児への配慮)についてご説明します。
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