白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2009.7.23 
           

夏風邪が長引くのはなぜ?


その1:夏風邪の特徴
その2:夏風邪をひきやすい生活習慣
その3:夏風邪の治療

(2008年7月31日放送の「おもいっきりイイ! テレビ」に出演させていただきました際の内容をもとに作成しました。)


冬の風邪と夏風邪、その違いは?
夏風邪はのどから感染
風邪の正体は、ウイルスによる鼻から気管の入り口までの炎症です(気管支炎、細菌による炎症と区別が難しいこともあります)

実は、「夏風邪」という言葉は医学的には存在しません。冬にかかる一般的な「風邪」に対して、夏にかかる風邪を慣習的に「夏風邪」と呼んでいます。

いずれにしても、風邪とはウイルスがのどや鼻の粘膜などから侵入することで罹患する病気で、厳密には急性(カタル性)ウイルス性上気道炎と呼ばれることもあります。カルテの病名には、「感冒」「急性上気道炎」のように省略したり、炎症の起きている場を強調して「咽頭炎」のように記載したりすることもあります。

  • 急性・・・発症が早い(目安として数日以内)
  • カタル性・・・分泌物の多い(鼻水が出るような)
  • ウイルス性・・・ウイルスが原因(細菌・真菌ではない)
  • 上気道炎・・・鼻から声帯までの炎症(気管支は声帯よりも奥にあるので、気管支炎は風邪ではない)


ノロウイルス感染症のように、下痢や腹痛などの消化器症状を主とするウイルス感染症を「お腹にくる風邪」と呼ばれることもありますが、本来は上気道、つまり鼻や気管支、のどの痛みなどの呼吸症状を主とするのが「風邪」です。なお、炎症とは、発熱・発赤・腫脹・疼痛(とうつう:うずくような痛み)の四兆候を含んでいます。のどの炎症であれば、赤くなって痛みがあります(痛み物質によって頭痛や関節痛を伴うことも)。治療は原則として、症状を和らげるだけの対症療法にとどまります。


夏風邪の原因となるウイルス
猫も夏風邪をひく?
猫も風邪をひく? ちなみに、ヘビは呼吸器の構造から気管支炎や肺炎を起こしやすいとか

風邪の原因となるウイルスは200種以上もあると言われていますが、冬はコロナウイルスやライノウイルス、(風邪とは区別しますが)インフルエンザウイルスが活動的になります。

これらのウイルスに対して、高温多湿な環境である夏には、アデノウイルスやエコーウイルス(エンテロウイルス)、コクサッキーウイルスなどが活動します(小児ではこの他ヒトメタニューモウイルス(3~6月)など)。

  • アデノウイルス……「アデノ」とは「喉(のど)」の意味。呼吸器と腸で繁殖。激しい咳が出る。小児ではプール熱(咽頭結膜熱)など、水を介して次々と感染を起こすことも。
  • エンテロウイルス……「エンテロ」とは「腸」の意味。喉だけではなく、腸で繁殖し、血液の流れに乗って皮膚に湿疹が出ることも。下痢・腹痛など、腸にも症状が現れる。小児では手足口病など。
  • コクサッキーウイルス……コクサッキーウイルスはエンテロウィルスの仲間。高熱と喉の腫れが特徴。小児ではヘルバンギーナなど。


ウイルスは鼻やのどの粘膜から感染し、呼吸器・腸管で増殖、血液の流れに乗ってウイルスの好む臓器へと運ばれていきます(ウイルスの「標的臓器」と言います)。なお、同一部位に種類の異なる別々のウイルスが同時に感染を起こすことは稀であると考えられています(ウイルスの「干渉(かんしょう)」と呼びます)。


次のページでは、夏風邪を招きやすい生活習慣についてご説明します。



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