長引く咳の原因、咳喘息
その1:長引く咳の原因を見極める/百日咳・咳喘息
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咳を鎮める「せき止め(咳止め・せきどめ)」 |
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薬で咳を必要以上に抑えると、かえって治るまでに時間がかかる可能性も。
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風邪をひいた後に咳だけが長引くことがあります。後述する原因のない場合、この咳は感冒後咳嗽(かんぼうごがいそう)、あるいは感染後咳嗽と呼ばれます。感冒後咳嗽であれば根本的な治療もありませんので自然治癒を待つのが最適だと思いますが、抗アレルギー剤や漢方薬の麦門冬湯も、状態によっては非常に効果的なことがあります。
長引く咳に用いられる治療ないし対症療法(咳止め)として用いられる薬剤は次のようなものです(マイコプラズマや百日咳など、炎症が続いている感染症を除きます)。
感冒後咳嗽 |
咳喘息 |
アトピー咳嗽 |
副鼻腔気管支
症候群 |
胃食道逆流 |
中枢性鎮咳薬 |
気管支拡張薬 |
抗アレルギー薬 |
抗菌薬
(マクロライド) |
制酸薬
・H2ブロッカー
・PPI |
抗アレルギー薬 |
吸入ステロイド薬 |
吸入ステロイド薬 |
麦門冬湯 |
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去痰薬 |
抗コリン薬 |
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(経口ステロイド) |
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マイコプラズマや百日咳に対しては、抗菌薬(※)を用いた治療を行います。マクロライド系あるいはテトラサイクリン系の抗菌薬が有効です。ニューキノロン系抗菌薬も有効です。成人の百日咳の特徴(症状)としては、嘔吐してしまうぐらい激しいせき込みが代表的です。こうした症状がある場合には、家族・周囲の子供さんに百日咳にかかった人がいないかも確認しておきましょう。このことで診断に結びつくこともあります。百日咳の感染初期には抗菌薬が有効ですが、上記表に挙げたような病気との区別が難しいことも多々あります。
(※)マイコプラズマ・百日咳に有効性な抗菌薬の例
クラリスロマイシン(マクロライド系)・・・小児・成人ともに使用できます。
ミノサイクリン(テトラサイクリン系)・・・成人に使用することがあります。小児では骨形成・歯牙の黄染などがあるため、原則として使用しません。
風邪をきっかけとした咳でありながら、あまりにも続くというようなときには、気管支喘息や類縁疾患、あるいは特殊な病原体による感染症を疑います。
例えば咳を1つの症状とする肺炎はレントゲン写真から診断につながりますが、レントゲン写真や肺機能検査(肺活量)、あるいは聴診を行っても異常を認めない咳の原因として、次のようなものがあります。
- 咳喘息
- アトピー咳嗽(アレルギー性咳嗽)
- 感染症(マイコプラズマ・百日咳・結核など)
- 胃食道逆流
- 薬剤(血圧を下げる降圧剤のうち、ACE阻害剤という種類)
- 心因性・習慣性
- 限局性中枢気道病変(気管支の中の小さな腫瘍や異物など)
なお、本来の「慢性咳嗽」とは8週間以上続く咳を指しますが、実際の臨床では8週間という基準では長すぎるため、3週間以上の咳を遷延性咳嗽として日本呼吸器学会から「咳嗽に関するガイドライン」が作成されています。今回は、咳喘息について取り上げたいと思います。まず、咳喘息の特徴について次のページで確認しましょう。
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