白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2009.5.29 
           

長引く咳の原因、咳喘息


その1:長引く咳の原因を見極める
その2:咳喘息の特徴的な症状
その3:咳喘息の診断基準、コデインについて


咳喘息の診断と治療
気道過敏性検査とは?
気道過敏性は、喘息を誘発する物質の濃度を徐々に上げて確認します(吸入による負荷試験)。喘息発作を誘発するリスクもあるため、慎重に行わなければなりません

咳喘息の診断基準は次のようなものです(1~7すべてを満たすこと)。

  1. 喘鳴を伴わない咳嗽が8週間以上持続する
    聴診上もwheezeを認めない
  2. 喘鳴、呼吸困難などの喘息の既往を認めない
  3. 8週間以内に上気道炎に罹患していない
  4. 気道過敏性の亢進
  5. 気管支拡張薬が有効
  6. 咳感受性は亢進していない
  7. 胸部X線で異常を認めない

実際にはすべてを確認するのは難しいため、簡易診断基準として上記の基準のうち、1(8週間を3週間以上と置き換えて可)と5を満たせば咳喘息として診断することもあります。咳喘息による治療は、気管支喘息とほとんど同じ内容です。治療上のキードラッグとなるのは、吸入ステロイド剤です。


咳がそれほど強くなく、時々だけという場合
 ① 気管支拡張薬をつらいときだけ使用する
    短時間作用型ベータ刺激薬吸入(サルタノールなど)
    テオフィリン製剤(テオドール、ユニフィルなど)


咳が持続的、あるいは上記治療だけでは不十分な場合
 ② 吸入ステロイド薬(フルタイド、パルミコートなど)
 ③ 気管支拡張薬
    長時間作用型ベータ刺激薬(セレベント吸入、ホクナリンテープなど)
    徐放性テオフィリン薬

 ④ 抗ロイコトリエン薬(キプレスなど)
 ⑤ 抗アレルギー薬(アレジオンなど)
 ⑥ トシル酸スプラタスト(アイピーディー)


この中でも吸入ステロイドに関しては、咳に対する効果はもちろん、咳喘息が気管支喘息へ移行するのを防ぐという効果も期待されます(ステロイド剤の内服も治療法として検討されることがあります)。


(参考)中枢性鎮咳薬、コデイン

風邪などの咳に対して、どうしても強力に咳を鎮めたいという場合には、中枢性鎮咳薬(コデイン)を頓服で処方します。特に気管支炎にまで至った場合には、他の系統の咳止めでは、いくぶん咳を抑える効果に劣ることがあるためです(注意:喘息の発作中には使うことができません)。

なお、コデインといえばリン酸コデイン(リンコデ)という薬をご存知の方も多いと思いますが、リン酸ジヒドロコデインという薬もあります。リンコデに比較して咳を鎮める効果は2倍程度と言われており、こちらの1回量を、リン酸コデインの半分にして処方しています(個人的な治療方針です)。吸収率を考慮すると、空腹時に服用するほうが効果的です。


リン酸コデイン、ジヒドロコデインとも強力な鎮咳作用がありますが、あまり使いすぎると便秘や眠気、風邪の治るのを妨げる可能性もありますので、必要最小限に辛いときだけ服用するのが良いと思います。時々毎食後服用といった処方箋を見るのですが、個人的には定期的に服用するのは避けたほうがいいかなと思っています。咳を抑えるので、風邪に効いたような気にはなるかもしれませんが……。


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