胸膜肥厚とは?
健康診断でレントゲン写真を撮影したとき、「胸膜肥厚」という異常所見を指摘されることがあります。結果の用紙には、経過観察・精密検査などが記載されますが、放っておいてもよいのかなと迷ったことがありませんか?
慌てずに対応するためには、この「胸膜肥厚」について知っておく必要があります。
胸膜とは、肺を覆っている膜のことです。通常のレントゲン写真では「この辺です(※)」とは言えますが、肉眼で確認することはできない薄い膜です。
この胸膜が何らかの原因で厚みを帯び、レントゲン写真で確認できるようになった状態を胸膜肥厚と呼びます。健康診断で指摘された「胸膜肥厚」のうち、問題となるのは次の2つの判断ではないでしょうか。
「放っておいても大丈夫?」
「できるだけ早いうちに精密検査あるいは治療が必要?」
(※)胸膜は肺をすっぽり覆っていますので、レントゲンでは肺と胸膜をわけて示すことはできません(帽子をかぶったとき「頭」はどこ? というようなものです)。ただし、レントゲン写真は平面ですが、実際の肺は立体構造をしていますので、肺の端っこの部分、特に肺が先細りする「肺のてっぺん(肺尖部)」では、炎症などで厚みを帯びた胸膜を指摘することができます。
石綿肺(アスベスト肺)・びまん性胸膜肥厚・胸膜プラーク
「びまん性」とは、「全体」「まんべんなく」といった意味です。石綿(アスベスト)による胸膜肥厚は、肺全体に及ぶことがあります。この場合、びまん性胸膜肥厚と呼ぶことがあります(参照:アスベスト検診)。また、石灰の成分が沈着し、レントゲンでは骨と同じように白く写った状態を、胸膜プラークと呼びます。
健康診断で胸膜肥厚を指摘されるのは、珍しいことではありません。例えば、炎症を起こして治癒したときにも、胸膜が厚みを帯びることがあります。言うなれば傷跡のようなものです。幼少時に気がつかないうちに炎症を起こしたのでは?
と説明されることもあると思いますが、よほどきちんとした記録(レントゲンの変化、発熱時の胸痛の有無などの自覚症状)の残っていない限り、原因を特定することは難しいのではないでしょうか。
胸膜肥厚が高度な場合には、肺結核や胸膜腫瘍を疑う所見の1つとなります。 年齢別には、一般的には20代~40代ぐらいの若年者であれば胸膜肥厚があったとしても病的なものではないことが多いのですが(注意)、50代以降で胸膜肥厚を指摘されたときに注意したいのは肺結核や、アスベストによる胸膜中皮腫の危険性です。
注意:本当にごく稀ですが、20代の若年者でも胸膜中皮腫の発症例が報告されていますので、絶対に大丈夫と断言することはできません。宝くじで特賞を当てるよりも少ない確率だとは思うのですが、胸膜肥厚ではなく気胸という肺がパンク状態になる病気で、手術をして偶然中皮腫が見つかったという例もあるようです。
次のページでは、胸膜肥厚を指摘されたときの考え方について補足します。
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