胸膜肥厚とは?
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A~C、すべて正常の写真です
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実際にレントゲン写真について患者さんに説明すると、たまに
「これ(A)って、何ですか?」
「これ(B)はガンですか?」
「私の肺は(C)、タール(煙・スス)で汚れて真っ黒ですね……。(喫煙者)」
という質問を受けることがあります。では、右の写真を見みましょう。
答えは次の通りです。
A:胃泡(いほう)と言います。文字通り、胃の一部なのですが、満腹だと写らないこともあります。健康診断では、空腹時に受診することが多いため、よく見かけます。左肺のすぐ下にあるのが一般的です。一部の白血病などで、脾臓がかなり腫れてくると、胃泡が圧迫されて中央に寄ってくることがあります。
(一般的にはこの所見から白血病に気がつくことはありませんが、大学時代実際の症例を教わりました。)
B:この白く写っているのは心臓です。普通に起立位で撮影した写真の場合、胸の端から端までの長さに対して、心臓の大きさが50%を超えた場合には心臓肥大を疑います。また、心臓と肺が重なっているため肺がんが心臓のカゲに隠れることもあります。写真を見るときに注意が必要なポイントの1つです。
C:よくタバコで肺が真っ黒、という表現を聞きます。事実、肺の中にタールやススなどが沈着することもありますし、レントゲンで肺が正常よりも「黒っぽく」写ることがあります。ただし、レントゲンで肺が黒くなるのは、タールが直接写っているのではなく、肺の組織が壊れてしまうためです。肺はすべてが空気の塊ではなく、血管や組織から成り立つため、こうした部分がごくわずかに白く写るので、タバコなどによって肺が壊れてしまうと、
おまけ:「これは何ですか?」 パート2
どこかの英語の教科書より
「What is this? Is this a pen ?(これは何? これはペンですか?)」
「No, it`s a cat.(いいえ、それはネコです。)」
こんなあり得ない会話が・・・あったような、なかったような。
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アスベスト肺の患者さんのレントゲン写真です。右肺の上部を拡大してみると胸膜肥厚が指摘されます
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肺と胸膜の間には、ごく微量の水(胸水)があり、1つの役割として、呼吸運動によって生じる肺と胸膜の摩擦を減らしています。いわゆる潤滑油のようなものです。正常な量の胸水もレントゲンでは確認できませんが、心不全や肺炎に伴って胸水の量が増えると、重力にしたがって(肺の下方から)白く写るようになります。
レントゲンの写り方(水と空気の「透過性」の違い)
骨・石灰化病変・・・最も「白く写る」。
空気・・・写真では黒い部分。空気にとんだ肺も黒っぽく写る。ただし、肺も血管や組織があるので、完全な「黒」ではない。
よく質問されるのが、レントゲンで右下方の黒いカゲ。
これは「胃泡」といいます。胃のてっぺんの部分で、空気がたまっているときに写ります。当然、満腹だと、胃泡は写らないこともあります。
肺結核後遺症、石綿肺(アスベスト)では、びまん性胸膜肥厚を伴うことがあります。
びまん性……全体に、いたるところに、といった意味です。なお、びまん性肺疾患は、サルコイドーシスや間質性肺炎などを含みます。
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