貧血を改善しよう:その4
一般的な外来診療では、貧血のうち最も多いのが鉄欠乏性貧血です。鉄分の不足は鉄欠乏性貧血の要因ですが、その反対に、鉄分が過剰になると強い毒性を示します。食事からの鉄分の摂取には自ずと限界がありますが、サプリメントなどを服用して漠然と鉄分を摂るのは控えたほうが良いかもしれません。
ただし、市販されているサプリメントには、鉄分だけでなく、鉄分の吸収率を高めるとされるビタミンC、葉酸やビタミンB12といった、他のタイプの貧血にとって必要な栄養素が配合されていることもあります。服薬にあたっては、鉄分を過剰に摂取することのないよう、薬局や医療機関(かかりつけ医)でも相談しましょう。
配合・・・複数の成分を併せ持つこと。
例:生薬配合→いろんな生薬を、ほどよい割合で含む。
「ほどよく」ってのが重要。
「お茶(コーヒー・紅茶)と一緒に鉄剤を服用すると効果が低下する」、ということが知られています。お茶に含まれるタンニン酸という成分が、胃酸によってイオン化した鉄(free
Fe3+)に反応するためです。
鉄剤との飲み合わせに注意する薬剤(鉄の吸収率が低下)
・胃薬の一部
・抗菌薬(抗生物質)の一部
・甲状腺ホルモン剤など
胃薬と同様に胃酸が乏しい状態、例えば胃の手術で部分もしくは全切除を受けられた方では、食事中からの鉄分も吸収されにくくなります。
鉄欠乏性貧血に次いで多いのが、二次性貧血と呼ばれるものです。二次性貧血では、赤血球恒数では鉄欠乏性貧血と同じく小球性貧血の格好になるのが約3分の1、3分の2は正球性貧血のかたちをとります。
大事なのは、「簡単な血液検査(赤血球恒数)では鉄欠乏性貧血と思えても、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化管出血が隠れているかもしれない」ということです。特に男性の場合、高度の貧血を診た場合には、慢性的な消化管出血も考慮しなくてはならないことがあります。
消化管出血・・・胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸がん、など。
特に消化器癌には注意。
大腸がんは、今後ますます増加するという予測。
その他、二次性貧血の原因として、炎症の影響ということもあります。肺炎などの経過中にもヘモグロビンが低下することもありますが、炎症が治まれば自然に回復することも稀ではありません。
診察チェックポイント!(鉄欠乏性貧血と二次性貧血)
- 鉄欠乏性貧血
まず、フェリチン低下(貯蔵鉄の低下)
→フェリチン低下に加えて血清鉄低下、不飽和鉄結合能上昇(UIBC上昇)
- 二次性貧血
ほとんどの場合、血清鉄が低下しているが、フェリチン(貯蔵鉄)は上昇
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