白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2009.4.27 
           

 

貧血を改善しよう:その2


その1:原因不明の体調不良
その2:女性の鉄分不足
その3:貧血の症状、加齢によるヘモグロビン濃度の変化
その4:貧血といえば鉄分、でも・・・?
その5:貧血の原因・種類(参考)


毎月の出血で喪失する鉄分

閉経前の女性の場合、個人差はあるものの月経のために40~50mlの出血があります。その中に含有されている鉄分はおよそ20~25mg。前のページに書いたように、通常の状態における1日当たりの鉄分吸収量が1mgだとすると、食事中からの鉄分が不足すれば簡単に貧血を起こしてしまう量です。

この喪失する鉄分を30日(1ヶ月)で割り算すると、1日に0.67~0.83mg。通常状態で吸収される1mgに加えて、更にこのぶんだけ食事から摂取しなければならず、若年女性に必要な「吸収される鉄分量は1.7~1.8mg」ということになります。

ただし、「吸収される……」とか、まわりくどく書いたのには理由があります。それは、食事中の鉄分が、そのまますべて吸収されるわけではないからです。では、どのぐらいの鉄分が吸収されるかというと、食物に含まれる量のせいぜい10分の1程度。ということは、

「思春期以降の女性は、毎日の食事で鉄分を12mgぐらい必要」

という目標が成り立ちます(男性は10mg)。妊婦さんや授乳中には更に鉄分が必要になります。


ちなみに、鉄欠乏性貧血の治療に用いる鉄剤の量は、
「1日に鉄(Fe)として100~200mg」です。
食事中の目安からすると非常に多いように思えますが、これは鉄分の貯金である、貯蔵鉄も補うためです。 鉄乏性貧血では、ヘモグロビン濃度は約1ヶ月してから徐々に上昇して一定の状態に達しますので、見かけ上は貧血が治ったように見えるのですが、短期間で服用を中止すると貧血が再発することがあります。このため、貧血が改善してからも1~3ヶ月ぐらい、血液検査を行いながら治療を続けます。


どんな食べ物がいい?

私の記憶が確かならば、ずいぶん前の医師国家試験で、鉄分欠乏性貧血と診断した上で(ここまでが頭をつかって考える問題だったが……)、「どんな食事を指導すべきか?」という問題がありました。

4つの選択肢のうち、正解は「ほうれん草」というものでした。でも、今ではこんな問題は出題できないかも。というのも、土壌の変化・品種改良(昔からのほうれん草が作られなくなってきた)など、「諸般の事情」というやつで、含まれている鉄分量も同じではなくなってきているからです。

それはさておき、貧血に関連する栄養素として代表的なものは次のとおりです。


鉄欠乏性貧血……鉄
巨赤芽球性貧血(原因:胃全摘出術後、小腸疾患、悪性貧血など)……ビタミンB12、葉酸
鉄芽球性貧血の一部……ビタミンB6


それぞれの栄養素が豊富に含まれる食物は次のようなものです。鉄分はビタミンCと一緒に摂ると、より吸収しやすくなるとされています。かたよることなく、いろんな食品を食べるようにしてください。

鉄……ほうれん草、パセリ、納豆、マグロ、寒天、プルーンなど
ビタミンC……レモン、かんきつ類、お茶(煎茶)など
ビタミンB6……マグロの赤身、牛レバー、にんにくなど
ビタミンB12……さけ(魚のシロザケ)
葉酸……アスパラガス、お茶(煎茶)


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