白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2009.7.29 
           

スズメバチの対策と応急処置


その1:アレルギーはなぜ起こる?
その2:クマバチ、クマンバチ?
その3:スズメバチに刺されたときの応急処置、エピペンR
その4:スズメバチを捕らえる罠(参考)


まぎらわしいハチの名前
クマバチ
クマバチ・・・ミツバチ科クマバチ属、きちんと調べるまで私も知りませんでした

ミツバチ、アシナガバチ、スズメバチ、後者ほど攻撃性が高いようですが、「クマバチ」あるいは「クマンバチ」という名前を聞いたことがありませんか?


クマバチという名前は強そうですが、実はおとなしいミツバチの仲間だそうです。一説によると、凶暴なイメージは、ミツバチを主人公にしたテレビアニメの影響もあるとか(クマバチが悪役として登場)。しかし、山口県の一部もそうなのですが、地方によってはスズメバチのことをクマンバチ(あるいは「熊」バチ)と呼ぶことや、完全に混同してしまっているということもあります。


このため、医療機関でも「クマバチに刺されました」という患者さんの診療を行う際には、十分な問診で本当に「クマバチ」なのか、「スズメバチ」であったのかを確認することも大切です。また、患者さんに尋ねてもハチの種類は確認できないこともよくありますので、不明な場合には重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)の出現も考慮した治療ないし経過観察が必要になります。


ハチアレルギーの対処法
虫刺され
蚊に刺されたら、とりあえず冷やすことで痒みが和らぐこともあります

「ハチに刺された時にはアンモニア(おしっこ)をかけると良い」と聞いたことがありますが、これはまったくの俗説です。医療機関の治療としては、かゆみを抑えるための抗アレルギー剤(抗ヒスタミン剤)を処方することもありますが、アナフィラキシー・ショックを起こさない限り、それほど大きな問題になることはありません。


ただし、アナフィラキシー・ショックを起こした場合には、血圧の急激な低下や、気道粘膜の浮腫による呼吸困難などによって、生命に危険を及ぼしますので、この際には昇圧作用・気道粘膜の浮腫を和らげる目的でアドレナリンを用いたり、強力な炎症・アレルギー反応を少しでも和らげるためにステロイド剤などを用いたりします。もちろん、血圧・呼吸状態などの全身状態を管理しつつの治療です。


現在のところ保険適用外ですが、アナフィラキシー・ショックを起こした場合に備えてアドレナリンの自己注射(商品名:エピペン)を所持しておくという手段もあります。山中で作業を行うような国家公務員の方は、全員が所持されているそうです。この注射は根本的な治療ではなく、医療機関に搬送されるまでのいわゆる時間稼ぎですが、スズメバチに刺されてから30分以内にアドレナリン注射を行うことができるかどうかで、死亡率にも大きな差があると言います。


次のページは、アドレナリン自己注射についてです。


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