スズメバチの対策と応急処置
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山登りやハイキング、思いもよらないところにハチが潜んでいることもあります
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熊やヘビ、寄生虫を持つキツネのように、国内にも危険な野生動物が生息しています。こうした野生動物の中で、最も多くの人間を死に至らしめているのがスズメバチです。他の野生動物に比べると、とても小さなスズメバチですが、その針の毒は人間にとって脅威となります。
スズメバチは夏から秋にかけて、活発な動きを見せるようになります。針に含まれている毒はアレルギー反応を誘発するため、一度スズメバチに刺されたことのある人が、(時間をあけてから)再び刺されてしまうと、重篤なアレルギー反応を起こして死に至ることがあります。アナフィラキシー・ショックと呼ばれる状態です。また、同時に複数のスズメバチに刺されてしまうと、アレルギーとは別にショック死を起こすこともあります。
スズメバチが原因となりうる死亡原因
① 重症アレルギー反応(アナフィラキシー・ショック)
② 外傷性ショック死
スズメバチによるアナフィラキシー・ショックはⅠ型アレルギー反応、別名を即時型反応と言い、原因物質である抗原(アレルゲン)と接触すると、30分以内という短時間で反応を起こすことが特徴です。花粉症や蕁麻疹もこのタイプのアレルギー反応です。ソバや小麦などの食物アレルギーもこのタイプのアレルギー反応ですが、スズメバチと同様のアナフィラキシー・ショックを起こすことがあります。
スズメバチにはできるだけ近寄らないことが肝要ですが、医学的な対策について少しだけまとめてみたいと思います。
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おとなしいミツバチにもアレルギーがあることも
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ハチに刺されたことのある人は多いと思いますが、スズメバチに刺されたことがあるかどうかわからない、ということがあります。アレルギーの原因となる物質を調べるには、皮膚のパッチテストやスクラッチテストなどもありますが、ハチ毒に対してはその危険性を考慮して血液検査を行うのが一般的だと思います。
様々な血液検査がありますので、細かい内容は避けますが、概説すると血液から免疫反応を司るリンパ球を取り出して、ハチ毒に触れさせることで免疫反応が起こるかどうかを試験管内で確かめるといったものです。リンパ球から分泌される、IgE(アイジー・イー)の量あるいは反応を調べたりします。一定以上の反応があれば陽性、つまりハチ毒にアレルギー反応があると判断します。厳密に言えば、ハチの種類によっても毒素は異なるのですが、前もってアレルギーの有無を確認しておくことで、万一の対策につながることもあります。
ハチアレルギーは血液検査で確認する
刺される頻度・・・アシナガバチ > スズメバチ > ミツバチ
ただし、「ムカデに刺されたことはあるけれど、スズメバチには刺されたことのない人」
が、初めてスズメバチに刺された際にアナフィラキシー・ショックを起こしたという例があります。ムカデの毒素がハチの毒素に類似していることが原因ではないかと言われています。アレルギー反応は原則として反復した暴露がなければ生じないものですが、類似した抗原(原因物質)によって反応が起きる場合もあるということです。
ところで、「昔、大きなハチに刺されたけれど、あれはスズメバチだったのかなぁ?」と思い当たることはありませんか。
次のページは、まぎらわしいハチの名前(クマバチ・クマンバチ)についての補足です。
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