白鯨の健康日記 筆者:吉國友和  update:2010.3.30 
           

ピロリ除菌に用いられる薬剤


その1:50代の7割がピロリ菌に感染

その2:ピロリ菌の除菌法

その3:ピロリ菌除菌とペニシリンアレルギー



ピロリ菌の除菌
朝食後・夕食後に薬を飲んでピロリ菌を除菌します

胃酸を抑える薬剤、抗菌薬(抗生物質)を2種併用した治療が標準です。なお、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用も可能ですが、商品によってはピロリ菌の除菌に対して保険が適応されないものもあります。ここでは先発医薬品を用いた場合の治療例を示します。

(成分名で表記)
① ランソプラゾール 1回量 30mg 1日2回
② アモキシシリン 1回量 750mg 1日2回
③ クラリスロマイシン 1回量 400mg 1日2回

 ①~③を併用して7日間連日服用。

ピロリ除菌のためのクラリスロマイシンの1日量は、400~800mgとされています。
ここでは800mgとして記載します。


商品名で記載すると、次のような例があります。
 ① タケプロンOD(30)を朝・夕食後に1錠ずつ服用
 ② サワシリン(250)を朝・夕食後に3錠ずつ服用
 ③ クラリス(200)を朝・夕食後に2錠ずつ服用

なお、これらが配合された(1つにまとめられた)配合剤もあります。

 配合剤・・・ランサップ400、ランサップ800
        ランサップの400・800という数字は、クラリスロマイシンの含有量です。


ピロリ除菌に用いる薬剤の特徴

① ランソプラゾール
プロトンポンプ阻害剤(PPI)と呼ばれる薬剤。H2ブロッカーよりも更に強力に
胃酸分泌を抑制する。ピロリ菌は酸性環境下で生育するため、胃酸分泌を
抑制することで除菌の成功率を高める。この他、ピロリ除菌にはオメプラゾール、
ラベプラゾールというPPIも使用可能(先発医薬品はすべて保険適応)。

ランソプラゾール・・・商品名 タケプロン
オメプラゾール・・・商品名 オメプラール、オメプラゾン
ラベプラゾール・・・商品名 パリエット


② アモキシシリン(略語:AMPC)
ペニシリン系抗菌薬。ペニシリンアレルギーのある場合には使用できない。
(アレルギーのある場合はこちらのページを参考に)。

  商品名 サワシリン、アモリン、パセトシン


③ クラリスロマイシン(略語:CAM)
マクロライド系抗菌薬。ピロリ菌除菌のための1回量は、200mg~400mgとされているが、ピロリ菌が抗菌薬に耐性化しつつあるという懸念や、静菌的に作用するマクロライド系の特性を考慮すると、特別な問題のない限り、十分量(高用量)を用いるべきと個人的には考えています。

  商品名 クラリス、クラリシッド

なお、マクロライド系抗菌薬は、その構造によって14員環、15員環、16員環薬に分類されます。ピロリ除菌では、14員環薬が用いられます。


ピロリ除菌の副作用・問題点
治療中の腹痛が重篤な副作用であることも。薬のせいと楽観視せずに主治医の先生に相談しましょう

上記の3剤を用いた場合、副作用としては次のものが代表的です。下痢や軟便は頻度の高い副作用ですが、整腸剤を用いて症状を軽減できることがあります。

・下痢、軟便・・・最も多い副作用。
          胃酸に影響を与えない整腸剤の併用は可能。
          約40%に出現。
・味覚異常・・・一時的であることが多い(約20%に出現)。
・肝機能障害・・・GOT・GPTといった肝細胞障害を疑う血液検査異常が見られることも。
・出血性腸炎・・・腹痛や下痢、血便などの症状。発熱を伴うこともあり、治療の中断を要する。
          主に抗菌薬が原因となる。


除菌の成功率は80~90%程度と考えられていますが、今後ピロリ菌が抗菌薬に対して耐性化した場合、治療成績も低下するのではないかという心配もあります。また、除菌不成功であった場合、二次除菌の方法について次のページで解説します。

(ペニシリンにアレルギーのある場合についても、3ページに治療例を示します。)


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